ある田舎にごく普通の高校に通うごく普通の高校生がいました。
海「あ〜あ。なんか面白いこと起きないかなー」
彼の名は高橋海斗。海斗はごく普通の生活にうんざりしていた。この言葉はもう口癖になってしまっている。
学校の文化祭や運動会など行事や祭りの時は目を輝かせるが、普段はその目に輝きはない。
文字通り死んだ魚のような目をしている。海斗には普通に中のいい友達もいる。勉強面も普通に点は取れている。部活動の吹奏楽部でも普通に楽器を吹けている。
全てが普通だ。
海斗は最近祈れば自由自在に天気を変えることができる少女の映画を見た。
海「俺もあんな世界に行ってみたいな〜」
海斗はそんな映画を見るたびにいつもこの言葉を口にする。
ある日海斗は帰り道友達に進路はどうするかを聞かれた。
友「海斗お前進路どうするん?」
海「決まってねぇ。何になりたいかも決まってない」
当然海斗は将来の夢は決まってない。最近どう生活すればいいのかも分からなくなってきた。
友達と別れた後少し歩いていると小高い峠があった。
海「暇だし登ってみるか」
海斗は引き寄せいられるように峠に登った。
頂上に着くとそこには田舎の田園が広がる景色が見えた。
海「なんて綺麗なんだ」
海斗は夕日に照らされオレンジ色に輝く空と素晴らしい田園風景に10分ほど見とれていた。
そして日も暮れそろそろ帰ろうと思った時、道に水たまりがあるのが見えた。
海「ん?ここ最近雨は降ってないはずなのに」
不思議に思い水たまりに近づいてみる。のぞいてみると日暮れ後の水色とオレンジのグラデーションが綺麗な空が見えた。
当然水たまりなので表面は鏡のように空が反射して見えるが、海斗はその水たまりに違和感を感じた。
海「底が見えない」
普通の水たまりなら底が見えるはずだが、この時は暗いから底が見えないのか深いから底が見えないのか分からなかった。
海斗はじーっと水たまりを見ていると聞き覚えのない声がかすかに聞こえた。
?「海斗・・・助けて」
声が聞こえた瞬間辺りを見回してみるが、誰もいない。
誰もいないことを確認するともう1度水たまりに目をやった。
すると水たまりの奥底に光があるのを見つけた。その光に導かれるように海斗は手を伸ばした。
海斗はそのまま手を水たまりに入れ、手首まで水たまりに入れた時、水たまりに体を引っ張られるのを感じた。
海「!?」
腕全体を水たまりに飲み込まれた時、海斗は声を振り絞って叫んだ。
海「助けて!!!」
しかし、ここは人一人いない峠。助けがくるはずもない。
そのまま体全体が水たまりに飲み込まれていった。
目を開けるとわずかに光が見えたので水をかき分けて光の方へと進んだ。
するとそこは暗い峠とは違う別の世界だった。